新薬承認情報【2022年初春】

新薬承認情報【2022年初春】

2022年初春の新薬承認品目のなかから薬局薬剤師に関係がある薬剤の概要をまとめました。

今回は品目数はそれほど多くありませんが、 片頭痛の効能の世界初のジタン系薬剤であるレイボー錠や「難治性の慢性咳嗽」を効能とする世界初の選択的P2X3受容体拮抗薬、 原発性腋窩多汗症を効能とする既存にない剤形のワイプ製剤など、文字通り「新薬」といえる薬剤が多いので薬剤師として認識しておいたほうがよいかと思います。

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①レイボー錠(ラスミジタン)

片頭痛を効能とするセロトニン1F受容体への選択性を有する「5-HT1F受容体作動薬」で世界初のジタン系片頭痛治療剤です。すでに米国では2019年に承認を取得しています。

セロトニン 1F 受容体に選択的に結合することにより、中枢での疼痛情報の伝達を抑制し、末梢では三叉神経からの神経原性炎症や疼痛伝達に関わる神経伝達物質CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)やグルタミン酸などの放出を抑制することで、 片頭痛発作に対する作用を示すと考えられています。

名称の由来は特にありません。

<用法及び用量>
通常、成人にはラスミジタンとして1回100mgを片頭痛発作時に経口投与する。ただし、患者の状態に応じて1回50mg又は200mgを投与することができる。

頭痛の消失後に再発した場合は、24時間あたりの総投与量が200mgを超えない範囲で再投与できる。

トリプタン系薬剤との添付文書上の違い

眠気、めまい等があらわれることがあるので、 自動車の運転等危険を伴う機械の操作は避ける必要があるのはトリプタン系と同様ですが、トリプタン系は禁忌項目が多い(心筋梗塞の既往、虚血性心疾患、脳血管障害既往、末梢血管障害、 コントロールされていない高血圧症など)のに対して、レイボー錠ではこれらの禁忌項目がないため、代替薬としても認識しておいたほうがよい薬剤かと思います。

こういった禁忌項目のような「確認すること」が少なく、重要な基本的注意などの「伝えること」の少ない薬剤は薬剤師目線として使いやすい薬剤ということになるかと思います。最近の薬だとベオーバあたりも同様の印象があります。

②エヌジェンラ皮下注ペン(ソムアトロゴン)

「骨端線閉鎖を伴わない成長ホルモン分泌不全性低身長症」を効能とする長時間作用型の週1回投与の成長ホルモン製剤です。

③ラピフォートワイプ(グリコピロニウム)

原発性腋窩多汗症を効能とする抗コリン作用を有する1回使い切りの薬液がついた不織布を用いるというワイプ製剤で、汗腺のムスカリンM3受容体へのアセチルコリンの結合を阻害することで、発汗を抑制するとされています。

1日1回、1包に封入されている薬液がついた不織布1枚を両方の腋窩に塗布します。

Rapid(速く)、Comfort(快適に)から命名されているようです。なお、原発性腋窩多汗症治療薬の抗コリン薬としてはすでにゲル剤のエクロックゲルが販売されています。

 外用薬だが内服の抗コリン薬同様の禁忌がある

禁忌項目はエクロックゲルと同様に、外用薬でありながら「閉塞隅角緑内障」や「前立腺肥大による排尿障害がある患者」が禁忌となるので注意が必要です。

なお、「排尿障害のない前立腺肥大」は禁忌ではなく、「特定の背景を有する患者に関する注意」の項目に記載されています

また、エクロックゲルにはない記載として、ラピフォートワイプでは添付文書の重要な基本的注意に、抗コリン作用により羞明等の眼の調節障害があらわれることがあるので、自動車の運転等の危険を伴う操作を注意する(避けるではなく注意の記載です)旨の記載や発汗が促進される環境下では、発汗抑制作用により、体温が上昇するおそれがある内容の注意記載があります

④リフヌア錠(ゲーファピキサン) 

「難治性の慢性咳嗽」を効能とする世界で初めて承認された選択的P2X3受容体拮抗薬です。

気道の迷走神経のC線維上にみられるP2X3受容体を介した細胞外ATPシグナル伝達の遮断により、感覚神経の活性化及び咳嗽を抑制するとされています。

名称の由来はありません。   

eGFR 30mL/min/1.73m2未満で減量が必要

通常は1日2回投与ですが、腎排泄型の薬剤であるため、重度腎機能障害(eGFR 30mL/min/1.73m2未満)で透析を必要としない患者に対しては、1 日 1 回に減量が必要とされています。

ただし、透析を必要とする末期腎不全患者では「用量調節を設定するための十分なデータは得られていない」とされており、用量が明記されておらずぼやっとしています。

⑤パキロビッドパック(ニルマトレルビル/リトナビル)

SARS-CoV-2による感染症を効能とする薬剤で、HIV感染症治療薬であるリトナビルを含有する配合剤でシート1枚に1日分が含まれるパック製剤です。

リトナビルはSARS-CoV-2に対して抗ウイルス活性を示しませんが、ニルマトレルビルのCYP3Aによる代謝を阻害し、血漿中濃度を維持する作用を示すようです。

現時点ではラゲブリオ同様に一般流通は行わず、配分を希望する薬局は、「パキロビッドパック登録センター」に登録するという配分方法であるため、該当薬局以外で調剤することはありません。

ラゲブリオと比べて下記の理由で、かなり扱いにくい製剤である印象です。

中等度の腎機能障害患者 で減量基準がある

シート1枚には1日分(朝及び夕方の2回分)のニルマトレルビル錠(計4錠)及びリトナビル錠(計2錠)が含まれますが、中等度の腎機能障害患者(eGFR30mL/min以上60mL/min未満)では減量する必要があるので、パックから減量分を取り除いて、取り除いた箇所に専用のシールを貼り付けて交付する必要があります。

高齢者で合併症があるような患者であれば多くの患者が eGFR 60mL/min未満 に該当してしまう一方で、処方される場合は対応薬局には新患として回ってくるケースが多く、患者情報がないので確認が非常に困難です。

なお、取り除いた錠剤は該当製剤のよくある質問に下記のように記載があるので、廃棄となるのかと思います。

<パキロビッドパックに関するよくあるご質問>
中等度腎機能障害患者に処⽅する際、抜き取った錠剤について記録が必要ですか︖

記録については定めておりません。施設のルールに従って廃棄してください。

併用禁忌が多い

HIV感染症治療薬であるリトナビルを含有するため、併用禁忌が30種類以上存在し非常に多いです。併用禁忌に注意が必要な印象のアゼルニジピンやハルシオンなど以外にも、併用禁忌の印象が薄いイグザレルトやセルシン、ユーロジンなども併用禁忌となっています。なお、配合剤であるため、リトナビル単剤製剤よりも併用禁忌が少し多くなっています。

前述同様に処方される場合は対応薬局には新患として回ってくるケースが多く、さらには患者とは電話対応のため手帳を見ることもできないので確認が非常に困難です。

なお、パキロビッドを扱わない薬局でも、コロナ治療薬で非常に併用禁忌の多い薬剤が存在することは認識しておいたほうが良いかと思います。

教育よりの話になりますが、リトナビルに限らずHIV感染症治療薬は併用禁忌に注意が必要で、併用禁忌の印象が薄いイブプロフェンやPPIでさえも併用禁忌のものがあるので、実際に遭遇する機会はほとんどないかと思いますが、「HIV感染症治療薬= 併用禁忌の印象が薄い薬剤でも併用禁忌の可能性がある」という認識もすべての薬剤師が持っていたほうが良いかと思います。

登録薬局が事前に確認しておいたほうがよい内容

パキロビッドについて下記の疑問点があったのですが、現状では製薬会社に疑問点を確認しようと電話をしても、忙しいせいか登録してある薬局でないと回答が得られにくい状況でした。

パキロビッドを扱う薬局であれば回答してもらえると思うので、登録薬局で下記があいまいなようであれば確認しておいたほうがよいかと思います。

・処方せんに記載する処方単位はシートなのか?
・処方単位がシートの場合は減量する場合はどのように記載されるのか?

・「重度の腎機能障害患者(eGFR 30mL/min未満)への投与は推奨しない」とされているが、禁忌ではないので医師の判断によっては処方される場合があるという認識でよいのか?

新薬DSU等の解説
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