2021年3月分のDSUのなかから薬局薬剤師に関係がありそうな薬剤を抜粋してまとめました。
今回はNSAIDs内服・坐剤全般の「妊婦等への投与」の項目に胎児の羊水過少症についての記載が追記されたことが大きな改訂内容となります。
① NSAIDs全般
NSAIDs内服・坐剤全般の「妊婦等への投与」の項目に胎児の羊水過少症についての記載が追記となりました。従来よりNSAIDsでは胎児動脈管収縮のリスクで妊娠後期が禁忌になっていましたが、今回は腎障害による羊水量減少という従来とは異なる理由となります。
これは、昨年の10月ごろに FDAが注意喚起した内容を反映する改訂です。FDAは妊娠約 20 週以降におけるNSAIDsの使用は、まれだが胎児に重篤な腎障害を引き起こし、これにより羊水量減少や妊娠関連合併症につながる可能性があることから、妊娠 20 週以降の妊婦における NSAIDs の使用を避けるよう勧告を出しました。
これを踏まえて、日本では添付文書に妊婦への使用時には必要最小限にとどめ、適宜羊水量を確認する旨の注意喚起が追記されました。
ただし、低用量アスピリンは、有益性と危険性を考慮した上で、医師の慎重な管理の下で常用されている薬剤であることから、 当該リスクに関する情報提供は必要であるものの、他のNSAIDsとは異なり「妊婦への使用時には必要最小限にとどめ、適宜羊水量を確認する旨」の注意喚起は不要と判断されました。
<妊婦等への投与>
投与する際には、必要最小限にとどめ、適宜羊水量を確認するなど慎重に投与すること。
シクロオキシゲナーゼ阻害剤(経口剤、坐剤)を妊婦に使用し、胎児の腎機能障害及び尿量減少、それに伴う羊水過少症が起きたとの報告がある。
なお、坐剤以外の外用薬についても「シクロオキシゲナーゼ阻害剤(経口剤、坐剤)を妊婦に使用し、胎児の腎機能障害及び尿量減少、それに伴う羊水過少症が起きたとの報告がある」の部分は追記となっています。
FDA関連の情報収集について
FDAが注意喚起した半年から1年後に添付文書国内の添付文書が改訂となることは今までも時々ありました。
通常の薬剤師であれば、国内の添付文書改訂時に知ればよいかと思いますが、「管理薬剤師で医師訪問の際にDI情報を伝えたい場合」や「DI専任業務をしている場合」などは定期的にFDAの情報を検索するとよいかもしれません。
FDAのDI情報、効能追加情報などをみておくと、半年から数年後の本邦での改訂や承認の流れがある程度予想できたりします。会員登録(無料)が必要ですが下記のm3.comという医療ページの記事検索で「FDA」と入れて検索するとFDA関連の情報がそれなりに出てきます。(知名度が高いサイトなのですでに登録済みの薬剤師も多いかと思います)
②クレストール(ロスバスタチン)
併用注意に非小細胞肺癌の薬剤であるタブレクタ錠(カプマチニブ)と腎性貧血治療剤のバフセオ錠(バダデュスタット)が追記となりました。
併用によりクレストール側のAUCが2倍程度上昇したと いう報告があるようです。なお、相手薬側では従来より記載されています。
<タブレクタ >
本剤とカプマチニブ塩酸塩水和物を併用したとき、本剤のAUC が 約 2.1 倍 、Cmaxが約3.0倍上昇したとの報告がある。
カプマチニブ塩酸塩がBCRPの機能を阻害することにより、本剤の血中濃度が増加する可能性がある。
<バフセオ>
本剤とバダデュスタットを併用したとき、本剤のAUCが約2.5倍、Cmaxが約2.7倍上昇したとの報告がある。
バダデュスタット がBCRPの機能を阻害することにより、本剤の血中濃度が増加する可能性がある。
タブレクタ錠やバフセオ錠がでている店舗では、実際にロスバスタチン処方された場合の対応クレストールの1日量が何mg以上なら疑義照会をするか(クレストールの1日量が何mg以上なら疑義照会をするかなど)を決めておいたほうが良いかと思います。
なお、相手役側の併用注意の記載は「クレストールの副作用が増強されるおそれがあるので、 患者の状態を慎重に観察し、 副作用発現に十分注意すること」のような記載となっています。
③マグテクト配合内服液・マーロックス懸濁用配合顆粒(水酸化アルミニウムゲル・水酸化マグネシウム)
下記の併用注意が追記になりました。相手薬の添付文書では従来より記載されています。
この手の吸収阻害系統の相互作用は制酸剤側の添付文書では記載がもれがちなので、追記されたのは整合性がとれて喜ばしいことかと思いますが、マグミットなどではいまだ記載がなかったりするので、この手の相互作用(制酸剤、プロトンポンプ阻害剤,H2受容体拮抗剤)は片方の添付文書だけみていると見落とすことは念頭に入れておいたほうが良いです。
下記のうちガバペンは「望ましい」というやや弱めの表現ですが、他の薬剤は強めの表現でAUCもそれなりに低下するので用法が併用注意に該当する場合は疑義照会などをして用法をずらす対応をとるのが無難かと思います。
ガバペンの場合は個々の薬剤師の判断で対応が変わってくるかと思いますが、少なくとも用途が疼痛でなく、てんかんの場合でかつ厳密にコントロールが必要な例などでは用法をずらす対応をとるのが無難な気がします。
なお、ガバペンで制酸剤と服用をずらす場合は「制酸剤の服用後少なくとも 2 時間以降にガバペンを服用」とされており、「先に制酸剤」という通常のキレートなどの際とは逆であるため注意が必要です。
<スプリセル(ダサチニブ)>
本剤との同時投与は避けること。本剤の投与が必要な場合には,ダサチニブ投与の少なくとも2時間前又は2時間後に投与すること。 ダサチニブの吸収が抑制され,血中濃度が低下する可能性がある。
<ガバペン(ガバペンチン)>
同時に投与することに より,ガバペンチンの最高血漿中濃度(Cmax) が 17%及び血漿中濃度時間曲線下面積 (AUC)が 20%低下した。 本剤の投与後少なくとも2時間以降にガバペンチンを服用することが望ましい。機序不明
<レボレード(エルトロンボパグオラミン)>
同時に服用するとエルトロンボパグオラミ ンの吸収が著しく妨げられることがあるので,投与前4時間及び 後2時間は本剤の投与を避けること。
錯体を形成する。
水酸化アルミニウム及び炭酸マグネシウムを含む制酸剤を単回併用投与した時、エルトロンボパグのAUCが約70%低下したとされています。
<アイセントレス(ラルテグラビル)>
ラルテグラビル投与前後6時間以内に本剤を併用投与した場合,ラルテグラビルの血漿中濃度が低下する。
キレート形成によるラルテグラビルの吸収抑制等がおこるおそれがある。
「水酸化アルミニウム /水酸化マグネシウム」をラルテグラビルと同時投与や2h前に投与の場合はラルテグラビルのAUCが半分程度減弱、2h後に投与の場合3割程度減弱とされています。
6h前や6h後の投与では減弱は1割程度に抑えられます。
<アデムパス(リオシグアト)>
本剤投与はリオシグアト投与後1時間以上経過してからとすること。 消化管内 pHの上昇によりリオシグアトのバイオアベイラビリ ティが低下する。
同時併用によりリオシグアトのAUC が34%減少します。
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