今回は2018年秋の新薬承認品目のなかから薬局薬剤師に関係がある薬剤の概要をまとめました。
今回は比較的どの薬局でも調剤する機会がありそうな薬剤が多い印象です。
また、慢性便秘症の薬剤が2種類でるため、混同しないように注意が必要です。
①ベオーバ錠(ビベグロン)
「過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁」を効能とする選択的β3アドレナリン受容体作動性過活動膀胱治療剤です。
同じ作用機序の薬剤としてはベタニスが存在しています。
ベタニスと比べて、禁忌、重要な基本的注意が少なく、ベタニスのような減量基準や「生殖可能な年齢の患者への投与はできる限り避けること」という警告もなく、「注意点が少ない」という点が特徴かと思います。
「Beta 3 agonist for the patient with Overactive bladder」の語句のうち「Beta」と「Overactive」から抜き出しBeOvaと命名されています。
②モビコール配合内用剤(マクロゴール4000/塩化ナトリウム/炭酸水素ナトリウム/塩化カリウム)
慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)に使用可能な国内初のポリエチレングリコール製剤であり、小児(2 歳以上) 及び成人において使用可能です。
主成分のポリエチレングリコールの浸透圧効果により、腸管内の水分量が増加します。
本品 1 包あたりをコップ 1/3 程度(約 60mL)の水に溶解して服用します。
名称の由来はありません。
用法及び用量
用法・用量はかなり複雑であり、年齢により「初回用量」、「最大1回投与量」、「最大1日投与量」、「増量幅」の4項目が異なるため監査の際に注意が必要です。
本剤は、水で溶解して経口投与する。
通常、2歳以上7歳未満の幼児には初回用量として1回1包を1日1回経口投与する。
以降、症状に応じて適宜増減し、1日1~3回経口投与、最大投与量は1日量として4包まで(1回量として2包まで)とする。
ただし、増量は2日以上の間隔をあけて行い、増量幅は1日量として1包までとする。通常、7歳以上12歳未満の小児には初回用量として1回2包を1日1回経口投与する。
以降、症状に応じて適宜増減し、1日1~3回経口投与、最大投与量は1日量として4包まで(1回量として2包まで)とする。
ただし、増量は2日以上の間隔をあけて行い、増量幅は1日量として1包までとする。通常、成人及び12歳以上の小児には初回用量として1回2包を1日1回経口投与する。
以降、症状に応じて適宜増減し、1日1~3回経口投与、最大投与量は1日量として6包まで(1回量として4包まで)とする。
ただし、増量は2日以上の間隔をあけて行い、増量幅は1日量として2包までとする。
治療の位置づけ
海外のガイドラインでは、英国の NICE ガイドライン(2010 年)に小児便秘症に対してポリエチレングリコール製剤をファーストラインとして使用することが記載されており、北米小児栄養消化器肝臓学会及び欧州小児栄養消化器肝臓学会のガイドライン(2014 年)でも、小児便秘症治療にポリエチレングリコール製剤を用いることが推奨されているようです。
成人に関しても、世界消化器病学会(WGO)のガイドライン(2010 年)及び米国消化器病学会(AGA)のガイドライン(2013 年)において、ポリエチレングリコール製剤が推奨されています。
本邦では、小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン(2013 年)及び慢性便秘症診療ガイドライン(2017 年)に、ポリエチレングリコール製剤の記載があるものの、慢性便秘症に対する保険適応はなく開発が待望されていました。
③ラグノスNF経口ゼリー分包12g(結晶ラクツロース)
ラクツロース製剤のなかで、日本ではじめて「慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)」の適応を取得した製剤で浸透圧性下剤に分類されます。
従来では、ラクツロースは本邦において(1)高アンモニア血症に伴う精神神経障害、手指振戦の改善、脳波異常、(2)産婦人科術後の排ガス・排便の促進、(3)小児における便秘の改善の適応が認められ、いくつかの製品が販売されていましたが、慢性便秘症の効能を有する製剤はこれまでありませんでした。
また、ラクツロースは「慢性便秘症診療ガイドライン 2017」において浸透圧下剤のうち糖類下剤に分類され、「強い推奨」、「質の高いエビデンスレベル」と評価されていますが、日本国内においては、成人に対する便秘症治療剤としての適応を持った製剤はありませんでした。
ラグノスゼリー分包16.05gとラグノスNF経口ゼリー分包12gの違い
従来より販売していた「ラグノスゼリー分包16.05g」は効能として、「高アンモニア血症に伴う精神神経障害、手指振戦、脳波異常」、「産婦人科術後の排ガス・排便の促進」のみでしたが、「ラグノスNF経口ゼリー分包12g」は「慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)」の効能が加わっています。
また、ラグノス NF 経口ゼリー分包 12gは、原薬をラグノスゼリー分包 16.05g よりも高純度の結晶ラクツロースに変更することにより、夾雑物であるガラクトースや乳糖を少なくした製剤であり、1包あたりのグラム数も少なくなっています。
従来から販売のラグノスゼリー分包16.05g の New Formulaとして「NF」と命名されてきます。
④エイベリス点眼液(オミデネパグ イソプロピル)
緑内障、高眼圧症を効能・効果とする選択的プロスタノイドEP2受容体作動薬です。
副作用として黄斑浮腫や虹彩炎に対して注意が必要であり、また、水晶体の無い人や眼内レンズを挿入している人が禁忌となるという珍しい禁忌項目がある薬剤です。
Eye + Bella(ベッラ:イタリア語で“美しい“の意味)が由来となっています。
⑤オラビ錠口腔用(ミコナゾール)
「カンジダ属による口腔咽頭カンジダ症」を効能とする国内初の1日1回投与の口腔粘膜付着型のミコナゾールの新剤形製剤です。
⑥トラディアンス配合錠(エンパグリフロジン/リナグリプチン)
DPP-4阻害剤のトラゼンタとSGLT2阻害剤のジャディアンスの配合剤です。
APとBPの2規格あり、トラゼンタはどちらも5mgでジャディアンスがAPでは10mg、BPでは25mgとなります。
⑦メトアナ配合錠(アナグリプチン/メトホルミン)
メトホルミンとDPP-4阻害剤のスイニー錠(アナグリプチン)の配合剤です。
LDとHDの2規格あり、スイニーはどちらも100mgで、メトホルミンはLDでは250mg、HDでは500mgとなります。
⑧ベージニオ錠(アベマシクリブ)
ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌を効能とするサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害剤です。
内分泌療法剤との併用により用いられます。
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