2017年11月分 DSUのまとめ・解説

2017年11月分 DSUのまとめ・解説
今回は2017年11月分のDSUのなかから薬局薬剤師に関係がありそうな薬剤を抜粋してまとめました。

今回はアゾール系薬剤やHIVの薬剤同様に、併用禁忌が非常に多い薬剤であるジャクスタピッドカプセル(2016年に発売されたホモ接合体家族性高コレステロール血症治療薬)との整合性を図るための併用禁忌改訂が多い印象があります。

服薬指導の際に併用薬としてジャクスタピッドを服用していることを聴取した場合は、併用禁忌が「非常に多い」という認識を持って相互作用を確認する必要があります。

なお、アゾール系薬剤やHIVの薬剤はCYP3A4に対する阻害作用が強いため併用禁忌薬が多くなっていますが、ジャクスタピッドはCYP3A4阻害薬の影響を受けやいため(強いCYP3A阻害剤だけでなく、中程度のCYP3A阻害剤も併用禁忌)併用禁忌薬が多くなっています。

スポンサーリンク

①イーケプラ(レベチラセタム)【重大な副作用】

重大な副作用に「悪性症候群」が追加となりました。

悪性症候群があらわれることがあるので、発熱、筋強剛、血清CK(CPK)上昇、頻脈、血圧の変動、意識障害、発汗過多、白血球の増加等があらわれた場合には、本剤の投与を中止し、体冷却、水分補給、呼吸管理等の適切な処置を行うこと。

また、ミオグロビン尿を伴う腎機能の低下がみられることがある。

②トラゼンタ(リナグリプチン)【重大な副作用】

重大な副作用に「間質性肺炎」が追加となりました。

間質性肺炎があらわれることがあるので、咳嗽、呼吸困難、発熱、肺音の異常(捻髪音)等が認められた場合には、速やかに胸部X線、胸部 CT、血清マーカー等の検査を実施すること。

間質性肺炎が疑われた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。

③パセトシン、サワシリン(アモキシシリン)【重大な副作用】

重大な副作用に「血小板減少」が追加となりました。

④アベロックス(モキシフロキサシン)【重大な副作用】

重大な副作用に「横紋筋融解症」が追加となりました。

横紋筋融解症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、筋肉痛、脱力感、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇等があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

また、横紋筋融解症による急性腎障害の発症に注意すること。

⑤セロクエル(クエチアピン)【重要な基本的注意・併用注意】

1.重要な基本的注意追加

重要な基本的注意に離脱症状に関する注意が追加となりました。

「投与量の急激な減少ないし投与の中止により、不眠、悪心、頭痛、下痢、嘔吐等の離脱症状があらわれることがある。投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行うこと。」

これは、本剤と同一成分であるビプレッソ徐放錠の臨床試験において、薬剤離脱症候群及び離脱症候群が認められており、本剤の投与を中止する場合は徐々に減量することが望ましいと考えられることから、ビプレッソ徐放錠の添付文書に記載されました。

このことから、同一成分であるセロクエルの添付文書にも追記し、注意喚起することとされました。

2.併用注意追加

併用注意に「強いCYP3A4阻害作用を有する薬剤」が追加となりました。

強いCYP3A4阻害作用を有する薬剤(イトラコナゾール等)

本剤の作用を増強するおそれがあるので、個々の患者の症状及び忍容性に注意し、本剤を減量するなどして慎重に投与すること。併用により本剤の血漿中濃度が高値となり、QT間隔が延長するおそれがある。

本剤の主要代謝酵素であるCYP3A4を強く阻害するため、血漿中濃度が上昇する可能性がある。

外国人に強いCYP3A4阻害剤であるケトコナゾール(経口剤:国内未発売)を併用投与したとき、クエチアピンのCmax及びAUCはそれぞれ単独投与の3.35倍及び6.22倍であった。

「本剤を減量するなどして慎重に投与すること」とされ、「併用により本剤の血漿中濃度が高値となり、QT間隔が延長するおそれがある」と記載されています。

また、ケトコナゾール(経口剤:国内未発売)を併用投与したときにセロクエルのAUCがおよそ6倍になったと記載されています。

そのため、他の強いCYP3A4阻害作用を有する薬剤でも、それなりにAUCがあがる可能性があるので、該当する場合は疑義照会したほうがよいかもしれません。

特に不整脈の既往がある場合やセロクエル自体を高用量で服用している場合などはより注意が必要かと思います。

強いCYP3A4阻害作用を有する薬剤とは

強いCYP3A4阻害作用を有する薬剤の具体的な薬剤名は「イトラコナゾール等」としか記載がありませんが、別の薬剤の添付文書で「強いCYP3A4阻害剤」として記載されている下記の薬剤などは該当すると考えられます。
 

・クラリスロマイシン(クラリス)
・インジナビル(クリキシバン)
・イトラコナゾール(イトリゾール)
・ネルフィナビル(ビラセプト)
・サキナビル(インビラーゼ)
・テラプレビル(テラビック)
・ボリコナゾール(ブイフェンド)
・リトナビル含有製剤(ノービア、カレトラ、ヴィキラックス)
・コビシスタット含有製剤(スタリビルド)

⑥グランダキシン(トフィソパム)【併用禁忌】

併用禁忌にジャクスタピッド(ロミタピドメシル酸塩)が追加となりました。

グランダキシンは併用禁忌が存在しないと思われがちなので、注意する必要があります。グランダキシンがCYP3Aを阻害することにより、ジャクスタピッドの代謝が阻害され血中濃度が著しく上昇するおそれがあるため併用禁忌となっています。

なお、ジャクスタピッド側の添付文書にはすでに記載されています。

⑦クラリスロマイシン【併用禁忌】

併用禁忌にジャクスタピッド(ロミタピドメシル酸塩)、ブリリンタ(チカグレロル)、イムブルビカカプセル(イブルチニブ)が追加となりました。

なお、相手側の添付文書にはすでに記載されています。

⑧フロリードゲル経口用(ミコナゾール)【併用禁忌】

併用禁忌にジャクスタピッド(ロミタピドメシル酸塩)が追加となりました。

なお、相手側の添付文書にはすでに記載されています。

⑨クレストール(ロスバスタチン)【併用禁忌】

1.併用注意追加

併用注意に「ダクルインザ(ダクラタスビル)、スンベプラカプセル(アスナプレビル)、ジメンシー配合錠(ダクラタスビル・アスナプレビル・ベクラブビル)」が追加となりました。

ダクラタスビル・アスナプレビル・ベクラブビルの併用でクレストールのAUCが3倍、Cmaxが9倍となる報告があります。

そのため、疑義照会したほうがよいかもしれません。

本剤とダクラタスビル、アスナプレビル、またはダクラタスビル・アスナプレビル・ベクラブビル(承認用量外の用量における試験結果に基づく。)を併用したとき、本剤の血中濃度が上昇したとの報告がある。

機序・危険因子:ダクラタスビル、ベクラブビルがOATP1B1、1B3 及びBCRPの機能を阻害する可能性がある。また、アスナプレビルがOATP1B1、1B3の機能を阻害する可能性がある。

代替薬

代替の選択肢としては下記の3点です。

①クレストールの減量
②AUCの変動率が比較的少ないプラバスタチンに変更(ただし、ストロングスタチンではないので変更しにくい)
③同じストロングスタチンであるリバロ、リピトールに変更(ただし、具体的なデータがないためクレストールより安全かどうかわからない)

メバロチンの場合は、AUCが 1.7倍、Cmax が2倍となる報告があります。

他のスタチンも併用注意となっていますが、具体的な数値の記載はありません。ジメンシー配合錠の製薬会社に確認したところ、クレストール、プラバスタチン以外のスタチンは具体的にAUCがどの程度上がるかはデータがないとのことでした。

2.併用注意追加

併用注意にスチバーガ(レゴラフェニブ)が追加となりました。すでにスチバーガ側の添付文書には記載されています。

クレストールのAUCがおよそ4倍となるため、疑義照会対象となるかと思います。

本剤とレゴラフェニブを併用したとき、本剤のAUCが3.8倍、Cmaxが4.6倍上昇したとの報告がある。

機序・危険因子:レゴラフェニブがBCRPの機能を阻害する可能性がある。

代替薬(BCRPの影響が少ないスタチン)

スチバーガにはクレストール以外のスタチン系薬剤は記載がありませんが、実際にどのスタチンが代替として適しているか(BCRPの基質とならないスタチンか)はスチバーガの製薬会社もわからないとのことでした。

スチバーガではありませんが、同様にBCRP を阻害するグラジナ錠ではリピトール、クレストール、ローコール、リポバスが併用注意となっています。

これはグラジナの併用により、腸管のBCRPが阻害されることが理由となります。(薬剤によってはCYP3A阻害も関与する)

リバロに関しては、グラジナと併用した場合でもAUCの増加率が少なくグラジナと併用注意ではありません。

ただ、実際にリバロがBCRPの基質になるかどうかは製薬会社も検討していないので不明ですが、今のところBCRPに関連する報告はない、とのことでした。

このことから、個人的には現時点ではリバロが代替として挙げられるかと考えています。

⑩イグザレルト(リバーロキサバン)【併用注意】

併用注意に「選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤が追加となりました。

これら薬剤との併用により、出血の危険性が増大するおそれがあるので、観察を十分に行い、注意すること。

機序・危険因子:本剤の抗凝固作用と血小板凝集抑制作用により相加的に出血傾向が増強される。

国内でイグザレルトとSSRI 又は SNRIとの相互作用により発現したとされる出血事象は報告されていませんが,SSRI 等のセロトニン再取り込み阻害作用を有する薬剤は,血小板におけるセロトニン取り込みを阻害することで血小板凝集能を阻害すると考えられています。

SSRI 及び SNRI の国内添付文書には,アスピリン,ワルファリン等との併用により出血傾向が増強することが注意喚起されているため,イグザレルトの添付文書の「併用注意」の「血小板凝集抑制作用を有する薬剤」として,SSRI 及び SNRI が追記されました。

⑪フォシーガ(ダパグリフロジン)【重要な基本的注意】

製造販売後臨床試験(インスリン併用療法試験)において、インスリン製剤との併用における有効性及び安全性が確認されたことから、重要な基本的注意の項目の「本剤とインスリン製剤との併用における有効性及び安全性は検討されていない」の記載が削除されました。

DSU等の解説
スポンサーリンク
Suzukiをフォローする
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします。
関連記事
薬局薬剤師ブログ 服薬指導の覚書

コメント

タイトルとURLをコピーしました