2022年秋の新薬承認品目のなかから薬局薬剤師に関係がある薬剤の概要をまとめました。
マンジャロ皮下注アテオスや配合剤(グラアルファ配合点眼液、リバゼブ配合錠)、ビオフェルミン錠剤の剤形追加として発売されるビオフェルミン散剤などはすべての薬剤師が把握しておいたほうがよいかと思います。
①マンジャロ皮下注アテオス(チルゼパチド)
「2型糖尿病」を効能とするグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の二つの受容体に単一分子として作用する世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬です。
本剤の構造は、天然GIPペプチド配列をベースとした単一分子ですが、GLP-1受容体にも結合するように改変されており、選択的に長時間作用し、空腹時および食後の血糖値を改善します。
1回使い切りのオートインジェクター型注入器(アテオス)による週1回皮下注射となります。
名称の由来はとくにありません。
規格が多いので過誤に注意
アテオスというとトルリシティを連想するので単一規格のイメージが強いかと思いますが、マンジャロは規格が6種類「2.5mg、5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mg」と従来の糖尿病の注射と比べて極めて多いため規格違いの過誤が想定されるので認識しておく必要があります。
重要な基本的注意に急性胆道系疾患の注意がある
GLP-1受容体作動薬としては珍しく、重要な基本的注意に急性胆道系疾患の注意が記載されているため、腹痛等の腹部症状がみられた場合の説明をする必要がありますが、腹痛はそもそもGLP-1受容体作動薬共通の注意点である膵炎での説明に含まれるので、実際の説明の内容が増えるということはそれほどないかと思います。
<重要な基本的注意>
胆嚢炎、胆石症等の急性胆道系疾患が発現するおそれがあるので、腹痛等の腹部症状がみられた場合には、必要に応じて画像検査等による原因精査を考慮するなど、適切に対応すること。
②グラアルファ配合点眼液(リパスジル /ブリモニジン)
グラナテックとアイファガンの配合剤です。
「グラ」ナテックと「アルファ」2 作動薬であるブリモニジンの配合剤であ ることからグラアルファと命名されています。
③リバゼブ配合錠(ピタバスタチンカルシウム/エゼチミ ブ)
リバロとゼチーアの配合剤です。
LDとHDの2規格ですが、エゼチミブは固定用量でピタバスタチンがLDでは2mg、HDでは4mg含有となります。
「リバ」ロとエ「ゼ」チミ「ブ」から命名されています。
ピタバスタチンが含まれるのでシクロスポリンが併用禁忌となりますが、一般的に配合剤になると、個々の成分への印象が薄まり相互作用が見落としがちになるので注意が必要です。
また、ピタバスタチンは「重篤な肝機能障害」はそもそも禁忌ですが、重篤でない肝障害のある患者に投与する場合には、最大用量が2mgに制限されるので4mg含有のリバゼブ配合錠HDは使用できません。
④ソーティクツ錠(デュークラバシチニブ)
既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾 癬、乾癬性紅皮症を効能とする、世界初の経口チロシンキナーゼ2(TYK2)阻害剤です。
名称の由来は特にありません。
⑤バクニュバンス水性懸濁注シリンジ(沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン)
バクニュバンスは沈降 15 価肺炎球菌結合型ワクチン(無毒性変異ジフテリア毒素結合体)であり、既存のプレベナー13(PCV13) に含まれる 13 種類の血清型(1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F 及び 23F )に加えて、2 種類の血清型(22F 及び 33F)の抗原が含まれています。
血清型22F 及び 33F は、既承認の PCV が現在カバーしていない血清型の中でも、相対的に侵襲性が高いこと、重篤な臨床転帰との関連を有することが報告されているようです 。
ワクチン(vaccine)から“VAX”を、肺炎球菌感染症(Pneumococcal disease)から“NEU”をとり、バクニュバンス(VAXNEUVANCE)と命名されたようです。
今後承認されるかもしれませんが、現時点では小児への接種は適応外です。
他の肺炎球菌ワクチンを接種した成人への本剤の接種の可否について
製薬会社のホームページ上では他の肺炎球菌ワクチンを接種した成人へのバクニュバンスの接種の可否について下記のように記載があります。
なお、他の肺炎球菌ワクチンとしては23 価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23:ニューモバックスNP)と沈降 13 価肺炎球菌結合型ワクチン(無毒性変異ジフテリア毒素結合体)(PCV13:プレベナー13)が存在しています。
<23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)既接種の場合>
PPSV23を既に接種していても、本剤を接種することが可能です。
PPSV23と本剤の作用機序は異なるため、一般的に、2つのワクチンを併用することでPPSV23で多くの血清型をカバーでき、本剤の接種によって記憶B細胞が誘導されるという2つの利点が期待されています。
<沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)既接種の場合>
本剤と同じ作用機序の結合型ワクチンであり、成人に対しては2つの結合型ワクチンを併用することは一般的ではありません。連続接種した際の免疫原性、安全性のデータもありません。
⑥ビオフェルミン散剤(ビフィズス菌)【剤形追加】
今更感が極めて強いですが、ビオフェルミン錠剤に剤型追加として散剤が発売となります。
従来からある「ラクトミン+糖化菌」が成分であるビオフェルミン配合散との過誤が起こることが容易に想像されるため、個人的には販売しないほうがいい製剤かと感じます。
存在を認識していないと、「ビオフェルミン散剤」の処方の際に、従来から存在し自店舗に在庫のある「ビオフェルミン配合散」で調剤してしまうという過誤がほぼ確実に起こるのですべての薬剤師が認識しておく必用があります。
⑦エディロール錠【剤形追加】
エディロールカプセルに錠剤の剤形が追加となります。
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