2019年7月分 DSUのまとめ

2019年7月分 DSUのまとめ

2019年7月分のDSUのなかから薬局薬剤師に関係がありそうな薬剤を抜粋してまとめました。

今回は下記の3つの大きな改訂があります。

1.コデイン含有製剤・ドラマドール含有製剤の「12歳未満の小児」の禁忌反映
2.抗コリン作用を有する薬剤の緑内障禁忌の改訂
3.メトホルミンの腎障害禁忌の改訂

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①コデイン含有製剤・トラマドール含有製剤【禁忌】

2017年にコデイン類及びトラマドールによる小児の呼吸抑制について注意喚起され、「12歳未満の小児」や「扁桃摘除術後又はアデノイド切除術後の鎮痛目的で使用する 18 歳未満の患者」(鎮痛に効能がある製剤)は将来的に禁忌とする通知がでましたが、その内容が反映され正式な禁忌となりました。

なお、禁忌ではありませんが、「重要な基本的注意」では18 歳未満の肥満、閉塞性睡眠時無呼吸症候群又は重篤な肺疾患を有する患者は投与しないこととされています。

<禁忌>
・12歳未満の小児
・扁桃摘除術後又はアデノイド切除術後の鎮痛目的で使用する18歳未満の患者(鎮痛に効能がある製剤)

<重要な基本的注意>
重篤な呼吸抑制のリスクが増加するおそれがあるので、18 歳未満の肥満、閉塞性睡眠時無呼吸症候群又は重篤な肺疾患を有する患者には投与しないこと。

②抗コリン作用を有する薬剤【禁忌】

禁忌の「緑内障」が「閉塞隅角緑内障」に変更となりました。

これに伴い慎重投与の項に「開放隅角緑内障」が追記となりました。開放隅角緑内障の患者においても、狭隅角眼が認められる場合は、抗コリン薬の投与により隅角閉塞を起こし、急性緑内障発作を生じるリスクを完全には否定できないことなどが理由となっています。

また、「狭隅角緑内障」という記載のものは「閉塞隅角緑内障」に用語統一されました。

狭隅角緑内障は閉塞隅角と同一視されていましたが、狭隅角は隅角が狭いという状態を表現するに過ぎず、隅角閉塞が存在することを意味しておらず、狭隅角緑内障は、閉塞隅角緑内障なのか開放隅角緑内障なのかがあいまいであることから統一されました。

薬剤師としての対応

今回、改訂されたものの実際に患者が自分の緑内障のタイプを把握していることは少ないため、実際の対応としては従来通り疑義照会対応が無難かと思います。

なお、疑義照会の際は今までの「緑内障が禁忌」という表現から「緑内障の状態により禁忌」という表現に変える必要はあるかと思います。

緑内障禁忌の薬剤の患者対応については以前の記事にまとめているため、下記をご参照頂ければと思います。

緑内障禁忌の薬剤の患者対応
今回は緑内障が禁忌である薬剤の服薬指導の際に、患者に緑内障の有無を確認し緑内障(閉塞かどうかは不明)であることを聴取した場合の対応をまとめました。 あくまで個人的な考えとなりますが参考になればと思います。

③メトホルミン製剤【禁忌】

従来は、「中等度以上の腎機能障害」が禁忌でしたが、「重度の腎機能障害(eGFR30mL/min/1.73 m2未満)のある患者又は透析患者(腹膜透析を含む)」に改訂となり腎障害に関する禁忌が緩和されました。

これに伴い「重要な基本的注意」に「中等度の腎機能障害のある患者」に関する注意が新設されました。中等度の腎機能障害のある場合の1日最高投与量の目安などは留意しておく必要があります。

また、従来より「過度のアルコール摂取者」は禁忌でしたが、併用禁忌にも「アルコール(過度の摂取)」が記載されました。

<禁忌>
重度の腎機能障害(eGFR 30 mL/min/1.73 m2未満)のある患者又は透析患者(腹膜透析を含む)

<重要な基本的注意>
中等度の腎機能障害のある患者(eGFR 30mL/min/1.73m2 以上60mL/min/1.73m2 未満)では、メトホルミンの血中濃度が上昇し、乳酸アシドーシスの発現リスクが高くなる可能性があるため、以下の点に注意すること。

特に、eGFRが30mL/min/1.73m2以上45mL/min/1.73m2未満の患者には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

・投与は、少量より開始すること。
・投与中は、より頻回に腎機能(eGFR等)を確認するなど慎重に経過を観察し、投与の適否及び投与量の調節を検討すること。
・効果不十分な場合は、メトホルミン塩酸塩として1日最高投与量を下表の目安まで増量することができるが、効果を観察しながら徐々に増量すること。
また、投与にあたっては、1日量を1日2~3回分割投与すること。

<中等度の腎機能障害のある患者における1日最高投与量の目安>
・45 ≦ eGFR(mL/min/1.73m2)< 60:1,500mg
・30 ≦ eGFR(mL/min/1.73m2)< 45:750mg

投与前及び投与後の腎機能、肝機能検査について

従来では、投与前及び投与後の腎機能、肝機能検査は、腎機能や肝機能障害のある患者に限定された記載でしたが、今回の改訂により、これらの障害の有無にかかわらず、投与開始前及び後の腎機能(eGFR等)及び肝機能検査が必要な記載となりました。

この内容はあまり製薬会社からのアナウンス(改訂の解説)がないので、改訂を見落としがちかと思いますが、糖尿病の場合は従来から投与開始前、投与後の腎機能、肝機能検査は行っているケースが多い印象があるので対応としては問題ない気がします。

<重要な基本的注意>
本剤の投与開始前及びその後も投与中は定期的に、腎機能(eGFR等)及び肝機能を確認するとともに、患者の状態に十分注意して投与の適否及び投与量の調節を検討すること。

なお、高齢者等、特に慎重な経過観察が必要な場合には、より頻回に確認すること。

④フェブリク(フェブキソスタット)【重要な基本的注意】

「重要な基本的注意」に心血管疾患に関する注意が追記されました。

なお、この試験はアロプリノール群との相対的リスクを示したものであり、アロプリノールは心血管イベントを抑制するとの報告もあることを考慮すると、フェブリク自体が心血管死のリスクを高めると必ずしも解釈できないことなどから、現時点では適用患者を限定するなどのフェブリクの位置付けを変更する措置は必要ないと判断されています。

<重要な基本的注意>
心血管疾患を有する痛風患者を対象とした海外臨床試験において、アロプリノール群に比較してフェブキソスタット群で心血管死の発現割合が高かったとの報告がある。 本剤を投与する場合には心血管疾患の増悪や新たな発現に注意すること。

<その他の注意>
海外で実施された心血管疾患を有する痛風患者を対象とした二重盲検非劣性試験において、主要評価項目(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、不安定狭心症に対する緊急血行再建術の複合エンドポイント)についてはアロプリノール群に対しフェブキソスタット群で非劣性が示されたものの、副次評価項目のうち心血管死の発現割合はフェブキソスタット群及びアロプリノール群でそれぞれ4.3%(134/3,098例)、3.2%(100/3,092例)でありフェブキソスタット群で高かった(ハザード比[95%信頼区間]:1.34[1.03, 1.73])。

心血管死の中では両群ともに心突然死が最も多かった(フェブキソスタット群2.7%(83/3,098例)、アロプリノール群1.8%(56/3,092例))。 また、全死亡の発現割合についても、フェブキソスタット群及びアロプリノール群でそれぞれ7.8%(243/3,098例)、6.4%(199/3,092例)でありフェブキソスタット群で高かった(ハザード比[95%信頼区間]: 1.22[1.01, 1.47]

⑤イブランス(パルボシクリブ) 【警告】

間質性肺疾患に関する内容が警告に記載されました。

間質性肺疾患は従来より、「重要な基本的注意」などで注意喚起されていましたが、同様の作用機序のベージニオでブルーレターがでたため、イブランスでも同等の注意を行うのが、適切と判断され警告に追記されました。

<警告>
間質性肺疾患があらわれ、死亡に至った症例も報告されているので、初期症状(呼吸困難、咳嗽、発熱等)の確認及び胸部 X 線検査の実施等、患者の状態を十分に観察すること。

異常が認められた場合には、本剤の投与を中止し、必要に応じて、胸部 CT、血清マーカー等の検査を実施するとともに、適切な処置を行うこと。

⑥シダトレン、シダキュア、ミティキュア、アシテア 【重要な基本的注意】

従来では「激しい運動、アルコール摂取、入浴等は 服用する前後 2 時間程度は避けるよう患者等に指導する こと」とされていましたが、今回の改訂で、「服用前」は具体的な時間が削除され、「服用後」は従来の2時間に加えて、服用後2 時間以降にこれらを行う場合にもアナフィラキシー等の副作用の発現に注意するよう改訂されました。

<重要な基本的注意>
本剤服用前、及び本剤服用後 2 時間は、激しい運動、アルコール摂取、入浴等を避けるよう、また、服用後2 時間以降にこれらを行う場合にもアナフィラキシー等の副作用の発現に注意するよう患者等に指導すること。

改訂理由

服用後 2 時間以降に運動等が行われ、アナフィラキシー等を発現した症例が集積されたため、「服用後 2 時間以降も」注意喚起を行うべきとの判断がされ改訂となりました。

一方、「服用前」の時間制限については、服用前 2 時間程度の設定に至るエビデンスがないことから具体的な記載は設けないことになりました。

時間の記載は削除されますが、引き続き、服用前の激しい運動、アルコール摂取、入浴等は避け、平常時の状態まで落ち着いてから服用するよう製薬会社は求めています。

指導せん

この改訂により、指導内容を従来から改訂の内容へと変更する必要があります。

現状の指導冊子の内容も改訂になることが予想されますが、製薬会社のホームページから確認したところ現時点ではまだ改訂されてはいないようです。

指導冊子が改訂されるまでは、指導冊子のままの説明では不十分となるため注意が必要です。

⑦コンサータ(メチルフェニデート塩酸塩)【取扱い上の注意】

一包化調剤は避ける旨が追記されました。

多湿の状態における本剤の安定性試験を実施したところ、25℃/90%RHで錠剤の内容物の薬物放出口からの漏出が認められたことから、改訂となりました。

<取扱い上の注意>
本剤は浸透圧による薬物放出制御システムを利用した製剤であり、吸湿により薬物放出挙動が影響を受ける可能性があるため、服用直前まで PTP シートから取り出さないこと(本剤を PTP シートから取り出し一包化調剤することは避けること)。

⑧レナデックス錠(デキサメタゾン)【割線追加】

錠剤に割線が追加されました。

これに伴い「本剤を分割後は、光を避けて保存し、1 ヵ月以内に使用すること」の記載が追記されました。

⑨デュピクセント皮下注シリンジ(デュピルマブ)

在宅自己注射が可能となりました。

DSU等の解説
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